「かなえてあげれないこともないけど、そんな願いをかなえても結局辛くなるのを先に引き伸ばしてるだけだよ」

「え、どういうこと?」

女神様の言葉を聞いて、僕は早口で聞き返した。

「離婚届が送られてきたということは、お父さんはもうすでに新しい人生があるのよ。つまり、あなたの家にはもう戻ってくる気はないのよ。一万円を神社に納めて、その日数分だけお父さんに会っても、結局辛い今に戻ってしまうわ」

お金を神社にたくさん納めているからか、女神様は僕の懐事情を心配した。

確かに女神様の言ったとおり、神社にお金を納めた分だけしか父親に会えないのなら、離婚するという結果を知っていたら辛くなる。

「そうかもしれない。そうかもしれないけど………」

そう言って僕は、拳をぎゅっと握りしめた。握りしめた拳が、ぶるぶると震えている。

「神社にお金を納めてくれるのはうれしいけど、このままでは破産してしまうよ」

女神様は、心配そうな顔で僕に言った。

女神様に願いをかなえてもらっている代わりに、僕の貯金はほとんど減っていた。数週間前まではお金なんかいらないと思っていた僕だが、今は減り続けるお金に危機感を覚える。