「お前。今朝、〝神様なんかいない〟って言ってたじゃん」

僕の胸に指さして、尊人は眉間にしわを寄せた。

「そうだけどよぉ………」

僕は、弱々しい声でつぶやいた。

今日が彼女と会えるのが最後だと思うと、一万円でも二万円でも神様に納めて密かに片思いをしているつぼみを引き止めたくなる。

「悪いけど今朝神社に行ったから、もう俺は行かないよ」

手をパタパタと振って、尊人は断った。

「そうか」

僕は、困ったような表情を浮かべた。




教室に戻って自分の席で先ほど購入したパンを食べていると、となりにいたつぼみが僕に声をかけてきた。

「ねえ、そのパンおいしい?」

「えっ!」

こもった声を上げたと同時に、僕は彼女に視線を移した。その瞬間、彼女と視線がからみ、僕の心臓の鼓動がドクンと跳ねた。