「願(ねがい)」

母親が、僕の名前を呼んで起こす。

夏休みが終わって、今日から学校がまたスタートする。昨日までぐっすり昼過ぎまで眠れていたのに、朝早くから母親の叫び声を耳にすると嫌な学校生活がまた始まったんだなぁって実感する。

「声がでがいよ………」

そう思いながら、僕はもう一日休みがあったらいいなぁと思った。

僕は寝室を出て、廊下を歩いてリビングに向かった。

僕の家は一戸建てで、窓ガラスから見える人工的な小さな箱庭から手入れされていない大きく伸びた雑草が見える。その雑草から、バッタがピョンピョン元気よく跳ねている姿が僕の目に見えた。

「お母さん、庭の手入れしたら。雑草、すごく伸びてるよ」

僕は、あくびまじりな声で母親にそう言った。

「仕事も家事もやってる私に、そんな時間あるわけないでしょ。願がやりなさい」

そう言って母親は、食卓テーブルの上に今日の朝食を置いた。