五分後、僕は神社に到着した。神社には鮮やかな紅葉が咲いており、秋の風景に彩られていた。
僕は神社の入り口に自転車を止めて、石段をのぼった。石段をのぼると神社が見え、それと同時に女性の後ろ姿が見えた。僕は参道を歩きながら、ゆっくりとその女性に近づいた。
「つぼみ」
僕は、その女性の名前を口にした。
「やっぱり、願も神社に来たんだ」
僕のことを呼び捨てにして、つぼみは振り向いた。
「また朝礼、サボりに来たの?」
少しだけわ笑って、つぼみは僕にそう言った。
「いや、違う。今日は学校行く前に、なんとなく神社に寄りたかったんだ」
それは、僕の本音だった。
「私も」
とても短い言葉だったが、つぼみの気持ちもそれが本音だということがわかった。
「つぼみは神社で、なんか願ってたの?」
僕がそう訊ねると、つぼみは「うん、願ってたよ」と言った。
「なに、願ってたの?」
つぼみの願いが気になったのか、僕の声が少し大きくなった。
「『転校しても、私の前に好きな人が現れませんように。そしていつかまた、願と尊人と会えますように』って願ったの」
つぼみの願いを聞いて、僕の目頭が熱くなった。
「おい二人とも、早く学校に行かないとちこくするぞ」
「わかった。行こう、願」
いつのまにか神社に到着していた尊人に呼ばれて、僕たちは学校に向かった。