「あれぇ、あれって、もしかしてつぼみじゃないか?」

ーーーーーードクッ。

尊人が親しげに彼女の名前を口にしたのと同時に、僕の心臓が跳ねた。頬がさらに熱くなり、心臓の鼓動が激しくなる。

神社の入り口に止めてあった赤色の自転車は、〝広瀬つぼみ〟のものだ。

「おーい、つぼみ」

右手を大きく振りながら、尊が参道を歩いて広瀬つぼみに近づいた。

「お、おい。尊人……」

僕は彼の名前を呼びながら、参道を歩いてつぼみに近づいた。

僕は心の中で尊人が、彼女のことを〝つぼみ〟と下の名前で親しげに呼んでいることに、モヤモヤした気持ちになった。

「あ、尊人君。神宮君。おはよう」

振り返ってつぼみは、笑顔で僕たちにあいさつをした。

夏休み明け、久しぶりに彼女を見ると、とても美しく感じた。女性らしい華奢な体型、パッチリとした大きな目、目の下にかすかにふくらんだ涙袋、薄いピンク色の唇、透き通った真っ白な肌、そして、やわらかい黒い髪の毛を青いリボンの髪留めで止めていた。