「ねぇ、ジュース買ってよ」

「えっ!」

「暑いから、のどかわいちゃった。おごってよ」

そう言ってつぼみは、すぐとなりに設置されていた自動販売機に指さした。

「いいけど」

つぼみに頼まれて、僕は短く返事した。

自動販売機にはペットボトルの飲料水や、缶のジュースが売られていた。

「なんか、飲みたいジュースはあるの?」

僕は、自動販売機に視線を向けて訊いた。

「ないよ。ただ、願君にジュース買ってほしいだけ」

そっけなく言ったつぼみの言い方に、なんだか僕にあまえているようだった。

「じゃ、この缶ジュースでいいっか」

僕はサイフから小銭を取り出し、自動販売機のコイン投入口に入れた。そして、缶の炭酸飲料を一本買った。

「これでいい?」

僕は自動販売機の取り出し口から購入したジュースを一本取り出し、それしをつぼみに手渡した。

「自分の分は、買わないの?」

僕が一本しかジュースを買っていないことに気づいて、つぼみは細い首をわずかにかたむけた。