「なにか、予定あるの?」

そこでつぼみが立ち止まって、不安そうな表情を浮かべて僕に訊いた。

「いや、特にないけど」

「そう、よかった」

そう言ってつぼみは、自転車を止めた。そしてガードレールに手を置いて、夕陽に照らされた街をながめた。

「ちょっと夕日、見ない?」

「いいけど」

断る理由もなかったので、僕も夕陽に照らさせれた街をながめた。

さっき教室で見たときよりも、空は濃いオレンジ色になっていた。

「きれいねぇ」

「うん」

目の前に広がる夕焼けに染まった住宅街の景色を見て、僕はうっとりした表情を浮かべた。

今までなにげなく見ていたからか、夕焼けに決まった街の景色を今日ゆっくり見ると、僕の瞳に美しく映っていた。

「ねぇ、帰らないの?」

「帰りたいの?」

夕日を見たまま、つぼみは僕に訊いた。

夕日に照らされたつぼみの横顔は……美しかった。

「いや。ずっと見てたら、帰るのおそくなるよ」

僕は、心配そうな表情を浮かべて言った。