「ごめんな、願。この前は………」

「この前?」

そう言って僕は、首をかしげた。

「願にだまって、つぼみと付き合っていたこと」

「あ、いいんだよ。それは」

彼の口から出た謝罪の言葉を聞いて、僕は胸の前で両手を振った。

たしかにあのときは怒りを感じたが、これから僕も尊人にだまってつぼみとデートをする。だから、僕に彼を怒る資格なんてなかった。

教室の窓から外に視線を向けると、太陽がゆっくりと西に沈み始めていた。あかね色の空に、カラスの鳴き声が聞こえる。

「好きだったんだ、俺も」

「えっ」

「俺も、つぼみのことが好きだったんだ。だから、願にバレたくなくて………」

ーーーーーーやっぱり。

頬を赤くして恥ずかしそうに言った尊人の顔を見て、僕はそう思った。

「願に正直に伝えると、もう俺たち友だちじゃなくなると思って………」

正直に話していると感情が高まったのか、尊人の声が涙混じりになっていた。