「はぁ、やっとのぼれた」

口から深いため息をこぼした僕は、やっと坂道をのぼった。坂道をのぼると、僕の住んでいる〝欲神町〟という小さな町の景色が見える。

古くから神様が住んでいる町と言われており、賽銭箱にお金を入れると願いが叶うと言われているが、いまだに僕は一度も叶ったことがない。

「僕、いくら神様にお金を納めたんだろう?」

そう思って僕は、神社の方に視線を移した。

僕の数十メートル先にある、もう見慣れた赤い鳥居と神社が見えた。少し先に進んだところには僕の通っている学校が見え、制服を着て自転車に乗って通学をしている生徒たちの姿が見えた。

「おい、尊人。早くしろよ」

振り返って、僕は彼を促した。

彼はまだ少し離れた距離で、自転車を押して坂道をのぼっていた。

「そんなこと言ったて、お前みたいに自転車をこいでそんなに早くのぼれるわけないだろ」

自転車を押して歩きながら文句を言う、尊人。