「君、いくつ?」

そう訊ねて、女神様は僕の背中に手を回した。

「十六歳」

こもった声で、僕は自分の年齢を口にした。

年上の女性だけあって話しやすいせいか、女神様には自分の想いを口にしてしまう。

「甘える男性は、女性にはモテないよ」

女神様にからかうような口調で言われた僕は、「寒かったからだよ」と言った。

僕の顔は、かすかに赤くなっていた。それは、〝寒いから〟という理由ではなかった。

「僕たちの関係も、お金でつながってるの?」

僕は、低い声でそう訊いた。

女神様に恋愛感情は抱いてなかったが、別れるのはさみしかった。

「どうしたの?急にそんなこと聞いて」

女神様は僕の質問に驚いたのか、切れ長の目をわずかに丸くした。

「いや、なんとなく訊いてみただけ」

僕は、小さな声で言った。

「うん、そうだよ。君のお金がなくなったら、私との関係もそこで終わる」

女神様は、あっさりと言った。

「そう………なんだ」

なんとなく僕の予想どおりだったけれど、女神様と神社で知り合って数ヶ月という付き合いもあってか、さみしさもあった。それ以上に付き合いが長いつぼみと別れると思うと、彼女を好きになったぶん、失うときが辛い。そして、つぼみを好きになったことを後悔している自分がいる。

ーーーーーーどうして、この世に別れなんて存在するんだよ。最後は別れる運命に支配されているのなら、人を本気で愛したら愛したぶんだけ、自分が悲しくなるだけじゃないか。

貯金がゼロになって、つぼみと別れるときを僕は頭の中で想像した。つぼみに対する愛情が深ったせいか、悲しみもとても大きい。