「そりゃあ、彼も最初は落ち込んでいたさぁ。でも、『半年も生きれたら、子供が産まれてくる時まで、僕はこの世で生きてられる』と言ったんだ」

その人はよほど心が強い人だったのだろう、女神様の言葉を聞いて涙腺がゆるんだ。

「でも、出産予定日がかなり遅れてね。このままだと、彼の命は子供が産まれる日まで持ちそうになかったの」

「えっ！」

追いうちをかけるような言葉が女神様の口から発せられ、僕の顔が青白くなった。

若くして肺がんと宣告されただけでも辛いのに、出産予定日が遅れるなんてひどすぎる。

僕は、下唇をぎゅっと噛んだ。

「それで、その人はどうしたの？」

女神様に問いかけた僕の声は、震えていた。

「子供が産まれる日まで神社に一万円を納め続けて、自分の寿命を一日ずつ引き伸ばしたの」

淡々と説明する女神様の声は、どこかさみしそうだった。

「そう……なんだ……」

僕は、その彼の行動が十分理解できたせいか、心臓をわしづかみされているような気分になった。

もし僕も結婚していて、子供が産まれる前に肺がんで死ぬと言われたら、きっと自分もその人と同じ行動を取ってるだろう。