次の日私は、小走りに目的に向かっていた。太陽が出て天気は快晴。でもやはりまだ寒い。暖かいのは、太陽が当たっている部分のみ。

 「やっぱりマフラーしてくればよかったかな……」

 四月とはいえ、北海道ではまだ春とは言えない温度。雪だって残ってる。

 「ルナ!」

 私を呼ぶ声が聞こえ声の方を私は見た。って見なくても相手は誰かはわかってる。マリアさんだ。だから大きな声でルナって言呼ばないで! って言えたらなぁ……。

 「おはようございます。あれ? 二人はまだですか?」

 時間的には集合時間ぎりぎりなので、遅刻か欠席という事になるけど。

 「おはよう、ルナ。二人ですが、昨日夜に連絡がありまして打ち合わせが入ったらしいのです。間に合えば来る事になってはおりますが……。ごめんなさいね」

 お休みのようね。毎回こういう感じなんだろうか?

 「そ、それじゃ仕方がないですね」
 「この埋め合わせは、きっちりさせますわ!」

 埋め合わせ……。本当に都合のいい人ではなく、仲間として部に迎え入れてくれたんだ。
 私は上辺だけではなく、本当にそういうつもりなんだと安心した。まあ、マリアさんは、二人を特別扱いしていないのは見てわかるし。
 私達は早速説明を聞きに行く。内容は介護老人施設の入居者のお散歩の補助。公園の端まで一緒に行って終了。
 私達以外にもボランティアの人達もいて、それぞれパートナーというか付き添う人が紹介された。
 つまり課外授業ってボランティアなのね!
 私と一緒に歩くのは、相沢さんという八十過ぎのおじいちゃんだった。

 「相沢さん、宜しくね」
 「こんな若い子とお散歩ができるなんて……」

 相沢さんは嬉しそうに笑った。
 公園にはまだ雪が残っていたが、道は綺麗に除雪されており、滑って転ぶっていう心配はなさそう。
 ルートは公園内ならどの道を通って行ってもよくて、普通に歩けば十五分の道のり。……だったんだけど、相沢さんでは無理そう。
 だって、ちまちまちまという歩き方。私は、相沢さんの横をゆっくり歩く。

 「あ……」
 「え?」

 相沢さんは何もない所でつまづいた!
 私が慌てて支えようとしたけどダメだった。私達はそのまま転んだ。

 「痛~い。……て、おも!」

 気づけば、庇いながら転んだ私は、相沢さんの下敷きに! しかも抱き合う感じに……。

 「あの相沢さん、起き上がれます?」
 「む、無理じゃ、手が……」

 もしかして怪我をした?! って、これじゃ起き上がれないよう! 兎に角誰か……。
 私が叫ぼうとしたとき、すぐ傍に気配を感じ振り向いた。
 助かった……。
 踝まである淡い緑色のスカートの女性が、手を伸ばせば届くほどのすぐ傍を通り過ぎる。
 え? 完全スルー? おじいちゃんと若い女の子が抱き合って倒れているから、見ないふり?! って、目もくれてないよね?
 考え事でもしていてって、それより……

 「あのちょっとすみません! 起こしてもらっても……」

 呼び止める声が止まってしまうほど驚いた。女性だと思っていた人は男の人だった! いや、驚いた原因はスカートだったと思っていのが、全身を包むローブのような物。髪も金髪。
 コスプレ?

 「あなたは俺が見えるのか!」

 しかも彼はそう言った! 何のキャラか知りませんがなりきってます……この外人さん。日本語もお上手で……。

 「見えてますので、おじいちゃんを起こしてもってもいいですか?」

 お兄さんは頷くと、相沢さんの脇を後ろから引っ張り上げ私の横に座らせてくれた。
 よかった。親切な人だった。

 「ありが……」
 「ルナ!」

 私は体を起こしてお礼を言うとすると、マリアさん達が駆け寄って来た。

 「ちょっと大丈夫?」
 「二人共怪我は?」

 スタッフの人は心配そうに声を掛けてくれた。私はそれに首を横に振る。

 「相沢さんが手が痛いって。ごめんなさい……」

 怪我をさせてしまった。

 「あ、手ね。それは今日ぶつけたのよね」
 スタッフの人が、持って来た車いすに相沢さんを座らせながら言った。私はそれを聞いて胸を撫で下ろす。怪我をさせたわけではなさそうでよかった。
 手を怪我しているに、自分で起き上がるなんて凄いわね」

 「お嬢ちゃん、見かけによらず力持ちだのう」
 「あら? わたくし? 何もしてなくてよ」

 マリアさんが相沢さんに話し掛けているけど会話がかみ合っていない。って、助けたのはどこぞのお兄さんです。

 「助けてくれた人は、コス……緑の服装をしたお兄さんで……」
 「緑? あらそうでしたの? 目に入りませんでしたわ」

 ちゃんとお礼を言えなかった。って、見えていなかった? あの不思議な格好を? 目立つと思うんだけどなぁ……。