「……」

 ったく、ほんとにもう……。

 私は気を抜くと緩みそうになる口元を必死に引き締め、心の中で盛大ににやけた。

 結局のところ、ゴリラ坊主の晄汰郎が考えていることは、私にはやっぱり、まだ今ひとつわからないのが現状らしい。でも、向けられている好意の大きさだけは嫌でも胸に響いてくるから、ほとほと参ってしまう。

「……私、めちゃめちゃ頑張っちゃおっかな」

 スマホをぎゅっと胸に抱き、ぽそりと言うと、その途端、友達にわっと抱きつかれた。

 口々に「頑張って!」「歩くのが遅かったらウチらのことは置いていっていいからね!」と紅潮した頬を持ち上げて言う彼女たちに「うん、うん!」と頷き返しながら、私は晄太郎から届いた特大のキュンを噛みしめる。

 最高の友達と、最高の彼氏。計算したり自分を偽ったりすることなんて、この人たちの前では必要ないんだ――。

 そう気づかせてくれたのは、やっぱり晄汰郎だ。

 晄汰郎には敵わないな……。

 そんなことを思いながら、私は改めて完歩に向けてのモチベーションをぐんと上げる。

 南和のゴールまで迎えに来てくれる晄汰郎の胸に飛び込むイメージは、もう完璧だ。


*end*