私が自分の顔が真っ赤だということを知ったのは、それから少しあとのことだった。

 心配して教室で待ってくれていた友達に「顔が真っ赤だけど、どうしたの? ちょっと泣いたっぽくない?」と指摘されてから。

 私はその顔で笑う。

「お守り、ちゃんと受け取ってもらえた!」

 その途端、教室中にキャー!と黄色い歓声が上がった。直後、友達に代わる代わるもみくしゃにされた私は、やっと離してもらったときには、髪も制服もぐしゃぐしゃだった。

 でも、とても清々しい気分だった。言えば大げさだと笑われるだろうけれど、例えるなら、生まれ変わったような。

 きっと、計算なんかしていたって上手くいかないことを教えてくれた晄汰郎のおかげだと思う。晄汰郎に作り変えられた体の内側から新しい自分がどんどん生まれてくる。

「で、どっちから告ったの?」
「返事はなんて言ったの?」

 質問タイムに入り、矢継ぎ早に飛ぶ質問に答えながら、私は少し違うことを考える。

 今日の帰りは、この通り遅くなるだろうから、もしかしたら晄汰郎と初めて一緒に帰れるかもしれない。そうしたら、何を話そう、どんな話をしよう、と。

 そのとき、熟れたりんごみたいな茜色が差しはじめた秋空のもと、グラウンドのほうからひときわ大きな野球部員の声が聞こえた。

 今日もゴリラ姿勢でノックを待っているだろう晄汰郎の声だ。その声を聞いて、私はまた、こっそり頬を緩ませた。