「あはっ。あはははっ!」

 真っ赤な顔でニシシと笑う晄汰郎に、私はたまらず吹き出す。答え合わせはひどく簡単だった。お互いに好き。たったそれだけだ。

「いつから私のことが好きだったの?」

 試しに聞いてみると、晄汰郎からは「グラウンド脇の道を通って帰る姿を見つけたときから」という、なんとも赤面ものだけれど、確信犯ではぐらかされたような返事があった。

 そんな晄汰郎に、ゴリラ坊主のくせに全然男らしくないんだけど、と頬を膨らませつつ、でも、ということは最近の話では……ない? と私は思わず考え込んでしまった。

 そうしていると「宮野もちゃんと完歩できたら、そんときは仕方がないから教えてやるよ」と晄汰郎が言う。それなら私も夜行遠足に向けてモチベーションがぐんと上がる。

「わかった」
「おう」

 晄汰郎の顔は前にも増して赤かった。けれど、私の顔も晄汰郎のそれと同じようになっていることを、このときの私はまだ知らない。

 そんな私たちの間を、さっきまでとは違う爽やかな秋風が穏やかに吹き抜けていった。そういえば、夜行遠足当日の天気も、今日みたいに気持ちのいい秋晴れになるらしい。