そうしないと、ずっと最悪の片想いだ。お互いに自分のスタイルを曲げる気はないんだから、相容れるわけがない。どちらかが諦めなければ――この場合は私がそうしなければ、どこにも気持ちの行き場がないのだから。

「そういうことか……」

 すると、質問には答えず晄汰郎がため息混じりに言った。何が〝そういうこと〟なのかと思わず顔を上げてしまうと、晄汰郎は野球のキャップを取って困ったように坊主頭をじょりじょり撫で、チラとこちらをうかがう。

「俺、宮野からお守りを渡されて、本当はすっげー嬉しかったんだ。最近やたらと目が合うし、そろそろ夜行遠足だし、もしかしたら俺のこと好きなのかも、って思って」

「え」

「でも、そんときに、ふと思ったんだよ。俺のことなんて別に好きでもなんでもなかったら、お守りなんて超無意味じゃんって。あのとき素直に受け取れなかったのは、宮野にとってお守りを渡すことがどういうことか、俺にはわからなかったからだ。もし俺のことが好きじゃないのに渡すんだったら、そんなの『いらない』って。受け取っても意味ないって。そう思ったからだったんだ」

「そんな……」

 あの〝いらない〟にそんな意味があったなんて、なんてわかりづらいんだろうか。

 もともと、わかりづらい人ではあった。でも、そこまで考えての〝いらない〟だったなんて、一体誰が想像できるだろう。