「うおっ、まだいるし」

 それからどれくらい、そこにいただろう。

 聞き馴染みのある声に顔を上げると、練習着に着替えた晄汰郎がなぜか目の前にいて、私を見る顔を若干引きつらせていた。

「……なによ。誰にも迷惑かけてないんだから、いいじゃん。晄汰郎には関係ない」
「またお前、そういう言い方。お前の友達が『詩が戻ってこない、あんたのせいだ』って俺に怒るんだよ。まだ戻りたくないなら、せめて連絡くらいしてやれよ。心配してんぞ」

「そ、それは……あ」
「ほら。心配してんだって。いいダチじゃん」
「……」

 もごもごと口ごもるそばからポコンとスマホが鳴り、メッセージの受信を知らせた。

 言われるまでもなく、私だって友達からポコポコとLINEメッセージが届いていることに気づいていないわけではなかった。心配をかけていることも、その頻度からよくわかってもいた。

 でも、どんな顔をして戻ったらいいのか、わからなかったのだ。というか、手鏡なんて今は持っていないから、人前に出ても大丈夫な顔かどうかの判断がつかない。