こんなところでしか本心を言えない自分が悔しくて、情けなくて、私は何度も自分の太ももを叩いた。でも、ただ痛いだけで気も晴れないし、涙も一向に引いてはくれない。

 一体私はどうなっちゃったんだろう。

 自分の感情の目まぐるしさに疲れてしまった私は、泣き腫らした顔を上げて、遠く上空を漂う雲を見つめて深いため息をついた。

 たかだか〝恋〟という名前で片づけてしまえるだけの感情なのに、中身がこんなにも思い通りに進まなかったり、相手の気持ちが読めなくて、いちいちイライラしたり苦い気持ちになったりするものだったなんて。

 ……今まで知らなかった。というか、考えたこともなかったかもしれない。

 たかだか恋。されど恋。

 こんなにも思い悩むことも、常に情緒不安定なことも、私には全部が初めてだ。

「はあ、もう……。もしかして、本当の恋ってこういうものだって教えてもらえただけ、好きになった価値はあるのかなぁ……」

 上空の雲から目を離し、スカートのポケットから、持ち歩きすぎてくたびれてしまった本命お守りを取り出し、じっと眺める。

 私にはこれは重すぎる。

 ちょくちょく目も合うし、そろそろ本格的に動き出すか、もうすぐ夜行遠足だし。そうやって完全に計算ずくで作ったものだから、なおさらだ。