誰にも聞かれることなく砂地の地面に吸い込まれていく本音という名の毒は、ともすれば自分にまで回ってきそうで、私は思わず一歩、身を引いた。

 けれどその間もみるみるうちに目に溜っていった涙は、とうとうぽたりと体から離れていってしまう。

「ううっ……」

 一度落ちてしまうと、もう自分の力では堰き止めきれなかった。量産されては体から切り離されていくそれらは、途絶えることなく私の足元にぽたぽた落ち続ける。

 放課後になってまだ間もない体育館裏は、静かなものだった。壁に背中を預けてしゃがみ込むと、湿ったため息が口をつく。

 気づいてしまった本心。膨張する恋心。だけど計算が嫌いな晄汰郎には到底伝えられるはずもなく胸の奥に厳重に鍵をかけて閉じ込めるしかない本音。

 ぽたぽたととめどなく落ち続けるそれは、それらの結晶だ。

「……でも、好きなんだもん」

 好きだから、頭の中の電卓を捨ててストレートにぶつかっていけないのだ。

 計算を取ったら私には何も残らない。計算なしではもう自分が取るべき行動さえわからない。

 完全に八方塞がりで、手詰まりで。

 ――でも。

「それでも好きなんだもん……」

 それが私の心からの本音だった。