……あれ? どうしてこうなった?

 思いのほか冷たかった、うなじのあたりを撫でていった秋風と、晄汰郎から注がれ続ける圧に軽く身震いしながら、私は思う。

 こうなったらもう、晄汰郎が好きだと認めざるを得ないところまで来ているのだろう。

 これまで特に意識したことはなかったけれど、きっと自分でも気づかないうちに晄太郎の姿がよく視界に入っていたはずだ。だから目が合うなと気づいたし、夜行遠足を機に彼氏にしたいと思ったんだと思う。

 それに友達に一部始終を話したときの感想も『もう付き合っちゃえよ』だったし。

 そんな彼女たちは、晄汰郎のほうも私のことが好きだから、みんなの前で教室を連れ出したり、一転、お守りをくれとせがんでいるんだと言って聞かない。

 でも私は、そんな虫のいい話なんてあるわけないでしょと思う。『くれる気があるんだったら早くちょうだいよ』とふてぶてしく催促してくるところなんか、どこが⁉だ。

 ああもう、自分のことじゃないからって、みんなして超楽しんじゃってさー……。

 私の気分は、今週中、ずっと浮かない。それに、月曜日の「計算、なの?」「なにが」から端を発してしまった気まずい空気の対処法もさっぱりなのだから、もうお手上げだ。