言いながら、苦しい理由付けだと思った。胸のドキドキの正体を晄汰郎のギャップのせいにしようだなんて、言い訳に過ぎないと。

 でも、それじゃあ私が嫌なんだ。

 ギャップを印象付けようとして、わざと乱暴な言葉遣いを選んでいた。だったら私よりよっぽど計算高いじゃんか――そう思っていないと、自分が自分じゃなくなってしまうような。そんな気がしてならない。

「だったら何? だから宮野って、顔は可愛いんだけどナイんだわ。そういうふうにしか物事を捉えられないって、どうなの」
「なっ……」

 けれど晄汰郎は、そう言ってため息をついたきり、教室に入っていってしまった。

 その後ろ姿は、普段と別段変わりないように見えてすごく怒っている。当たり前だ、怒らせるようなことを言ったんだから。

 自分でもなんてひどいことを言ったんだろうと思う。でも、そこまでして背中で語らなくてもいいじゃんかとも、正直思う。

 こっちは十分、自覚済みなのに。

「おーい、宮野も早く教室に入りなさーい」
「……あ、はい」

 すんと鼻をすすって湿った息を吐き出すと、いつの間にかすぐ後ろまで迫っていた気の早い先生に間延びした口調で促され、私も仕方なく教室に入る。

 このクラスに日本史の授業をしに来た先生だ。温厚で、生徒を叱るところなんて想像できないけれど、どうやら、わりとせっかちな先生らしい。