グループ五人のうち、晄汰郎と仲がいいのは、どうやら統吾だけのようだ。

 ほかの四人は砕けきったふたりの会話を物珍しそうに聞いていて、彼らの近くに足を止めたままの私も、よく喋る晄汰郎がとても珍しかった。

「もうすぐ授業だな。じゃあな」
「おー」

 少しして、気の早い先生が廊下の向こうから姿を現したことに気づいた晄汰郎が統吾に向けて軽く手を上げる。統吾もひらひらと緩く手を振り、彼ら五人は連れ立って自分たちの教室に戻っていく。

「知り合いなの?」と尋ねる女子に「近所の幼馴染なんだよ」と統吾が答える声が、すっかりひと気の減った廊下に少しだけ響いて私の耳にも入ってくる。

 そうか、幼馴染か。なら、クラスの誰よりも砕けた会話をしていたのにも頷ける。

「で、宮野は盗み聞き? 宮野も早く教室に戻んないと、マジで授業はじまるぞ」

 すれ違いざま、晄汰郎に声をかけられる。さっきは目が合っても白々しく逸らしたくせに、今度はしっかりと目を合わせて。

「……計算、なの?」
「は?」
「今の、あの男子との」
「だから、何が。聞こえてただろ、幼馴染との会話に計算なんて必要あんの?」
「いや、私も近くにいたから、なんかギャップっていうの? そういうのを感じさせたくて、わざと言ってたのかなって……」