しきりにグラウンドを見ているということは、そこで活動している部活のどれかなのだろう。
 男子も後輩女子も、まさか見られていたなんて夢にも思っていなかったはずだ。

 ここにも夜行遠足前特有の恋のあれこれがあったんだと思うと、一人じゃないんだとちょっとだけ勇気づけられる。

 でも、自分が二人の立場だったらと思うと、とてもじゃないけれど他人事とは思えない気分だ。

 私もさっき、晄太郎に似たような目に遭わされた。あれじゃあ、私たちの間に何かあったとクラス中に言っているようなものだ。

「おおー、晄汰郎じゃん! いつも相変わらず絶妙な坊主頭してんねー!」

 と、唐突に一人の男子が廊下の向こうに声を張り上げた。ちょうど彼らの近くを歩いていた私も聞き慣れた名前に思わず振り返る。

「おー、統吾。お前は相変わらず、いつも絶妙にダサチャラいな。似合ってねーんだよ」
「うっせーなー」
「ははは」

 坊主でゴリラの晄汰郎と、ダサチャラいらしい統ちゃん――統吾という名前らしい男子の異色の組み合わせに、振り返りつつも動かし続けていた私の足はとうとう止まる。