「……な、なんだったの、って」
「俺のこと、本気で好きになったの?」
「は?」

 視線を明後日のほうに向けてはぐらかそうとすると、間髪入れずに聞かれて、またばっちり目が合ってしまう。

 しまった、これじゃあ晄汰郎のペースだとハッと我に返ったときには、けれど、もう遅い。

「ちょっと」
「えっ、えぇっ?」

 野球部で鍛えられた反射神経がものを言ったのか、目にも止まらぬ速さで晄汰郎に腕を取られてしまい、あれよあれよという間に教室を連れ出されてしまう。

 クラスメイトや友達からの「何事?」「どうした?」という視線を体中に嫌というほど浴びながらの連行は、それだけで顔から火が出そうなほど恥ずかしい。しかも足がもつれて前につんのめりそうになってしまい、もう踏んだり蹴ったりだ。

 もうすぐ次の授業だというのに、晄汰郎は一体どこに連れて行こうとしているのだろうか。

 とにかく恥ずかしいから、もうやめてほしい。お願いだから。ほんとマジで。