「宮野さ、金曜のあれはなんなの?」

 珍しく晄汰郎のほうから話しかけてきたと思ったら、週が明けた月曜日も安定した真顔で尋ねられたのは、自分でも不思議で仕方がない、例の突発的な行動のことだった。

『……また、渡すから。受け取ってもらえるまで、何回でも。……じゃあね』

 一言一句、覚えている。

 全速力で坂道を駆け下りたことも、まさか今さら自分のほうが晄汰郎を意識してしまうなんてと驚愕したことも、全部全部、今さっきのことのように。

 だから会いたくなかった。でも、同じクラスなのだから、逃げも隠れもできない。

 そんな、今一番顔を合わせたくない相手がズカズカと席にやって来たのは、二時限目の授業後、間もなくのことだった。

 常に冷静沈着、真顔がフォーマットのような晄汰郎でも、金曜のことが少なからず気になっていたのだろう。

 晄汰郎の行動に完全に意表を突かれた私は、正面から真っすぐに見下ろしてくる彼をぽかんと口を開けて見上げたまま、しばし固まってしまった。

「……」
「……」

 そんな私たちの間に沈黙が走る。