晄汰郎への勘違いも、お守りも、すべてはそれ。

 そうやって無理やりにでも片づけてしまわないと、自分のあまりの格好悪さに駅へ向かう足が止まってしまいそうだ。

「月曜日にね、っと」

 そうして友達からの『どうだった?』『上手くいった?』というLINEに適当に返事をして顔を上げると、ちょうど野球部員が外野に高く飛んだフライをグローブに収めようと、その軌道を追いながら後ろ向きで走ってくるところだった。

 高いフェンスで囲まれているので当たる心配もないのだけれど、条件反射的に私の足は止まってしまう。

 すると、グローブを嵌めていないほうの右手を添えて丁寧にフライを捕球した部員が、ふいに後ろを振り向いた。その瞬間、お互いに声にならずにぽかんと口が開く。

 だって――晄汰郎、だった。

 こんなことでもなければ、ポジションが外野だったなんて知るはずもなかっただろう。

 晄汰郎は、すぐにはっと我に返って、胸の前でグローブを構えている別の部員にボールを返球する。そして、気まずい顔などひとつもせずに、空き教室でのときのような真顔で「もう一本!」と、はるか向こうのホームベースに向かってノックを要求した。