「あーあ。どうしてこうなっちゃうかな。今年はテンション上がると思ったのに」

 去年、一年生のときの夜行遠足は、ただただ苦しい、つらい、歩きたくない、帰りたいとエンドレスで思うだけだった。

 何もいらないから、ゆっくり休める土日が欲しい。こんなことをして何の意味があるんだと欝々とした気持ちを抱えながら、それでも友達と励まし合って43キロの道のりを完歩した。

 でも、少なからず虚しさも残った。

 完歩したときは確かに達成感と爽快感を覚えたけれど、去年はそのあとに何もイベントが控えていなかったから。――例えば、お守りのお礼にりんごをもらったり、一緒にアップルパイを食べたり、というような。

 夜行遠足は二学期の体育の評価に大きく影響するので、よっぽどの理由がない限り休むことは許されない行事でもある。

 必ず完歩しないと評価がもらえないほど教師も鬼ではないけれど、そのために頑張っただけというのが、私はどうしても虚しかった。

 もっとこう、青春っぽいのがしたい。

 今だって、青春の定義も意味も今ひとつピンとこない。でも、周りの先輩たちを見ていると、やっぱり青春だなあと思った。