「言い返さないってことは、そういうことだよね」

「え? なんでそうなるの?」

美園にそう返しながら、ちらりと隣を見ると、
開き直ったフジミんはのんきに水を飲んでいた。

私の視線に気づいた美園が、鼻で笑った。

「やっぱりそういうことなんだ」

「だから、そうじゃなくて」

立ち上がった美園の腕をつかむと、思いっきり振りほどかれた。

「触らないで」

初めて聞く冷たい声に、思わず手を引っ込める。
フジミん以外の三人の間に流れる、気まずい空気。

「私、帰る」

強引に店を出て行く美園。
あとを追いかけようとした私を、真澄が止めた。

「今はやめた方がいいよ。私が行く」

ああ、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。

それなのに。

うなだれる私の顔を、
フジミんが「ねえ、さおりん」とのんきに覗き込む。

「さっきの話だけどさあ」

「うるさい! 嘘つき! 最低!」

怒りに任せてそう叫ぶと、私は店を走り出た。