「嘘言わないでよ! 二人でご飯なんか食べてないし!」

「食ったじゃん。5日に」

「食べてない! だってその日は…」

違う世界で、あっちの直規と一緒にいたんだもん。
その一言が言えずに飲み込んだ。

「だってその日は? その日はどうしてたの?」

美園が私に詰め寄る。
怒ってるっていうより、「嘘だよね?」って言っている目。

「ちょっと用があって、遠くに行ってたの」

「一人で? 用って何?」

「だから……その……」

「いつもそうだよね、さおりって」

いつもそうって、どういう意味だろう。
戸惑う私に美園は口をへの字に曲げて言った。

「心を開いてないっていうかさ。
こっちは何でも話しているのに、絶対本音は言わないよね。
壁があるっていうかさ。そういうの、なんかすごいムカつく」

美園がそんなふうに感じてたなんて、思いもしなかった。
っていうか、何で私が怒られなきゃいけないんだろう。
悪いのはフジミんじゃないの?
 
心の中は混乱しているのに、そう見えないのが私の悲しいところだ。