フジミんの手を慌てて押さえる。
手に持ったカップと私を交互に見て、
フジミんは「あっぶねえ」と紙カップを置いた。

間に合った、とホッとした次の瞬間。
目の前にいるのが直規ではなく、
美園の彼氏のフジミんだってことを思い出した。

やばいやばいやばい! 

どうしよう、やっちゃった……。
恐ろしくて顔が上げられない。

「どうしてさおりが知ってるの? 
フジミんがチョコレートアレルギーだってこと」

それは……話しても信じてもらえるわけない。
それより美園が納得できる言い訳をしなきゃ。

「さおり?」

「え……と、前にファミレスでご飯食べた時、言ってたでしょ」

「言ってないよ」

「えーと、ほら、美園がトイレに行ってる時に」

美園にじっと見つめられ、思わず視線が下がる。
まずい、変な汗が出てきた。

「さおり、嘘ついてるでしょ」

……バレてる。やっぱり美園は鋭い。
いや、感心している場合じゃなくて。

「別にいいじゃん」

え? 女子三人の目がフジミんに集まる。

「さおりん、言っちゃおうよ」

「は?」

この人、何言ってるの?

「ゴールデンウィークに二人で飯食ったんだもん。
そりゃ知ってるよ。っていうか、
誰とどこで何しようが俺の勝手じゃん。
グダグダうるせえよ」

はぁ!? この人、何言ってんの!?