ゴールデンウィークから1週間経った放課後。
私はJR山手駅の改札の柱の陰に隠れていた。
まるで、安っぽい刑事ドラマの張り込みだ。

「いた! 容疑者発見、確保!」

飛び出していった美園の後を、真澄と一緒に追う。

「やだ、何!?」

ブレザーの制服を着た女子高生の叫び声が駅前に響く。

「イテテ! タップタップ!」

真澄によってあっという間に
右腕を背中で締め上げられた「容疑者」が苦しそうに叫ぶ。

「ちょっと顔貸してもらおうか、佐藤直規くん」

かわいい顔からは想像もつかない
ドスの利いた美園の声に、フジミんが力なく頷いた。

セーラー服の女子高生三人組に連行されるフジミんを、
同じブレザーを着た男子グループがニヤニヤ観ている。
恥ずかしくて逃げだしたいけど、仕方がない。
友情のためだ。

ブレザー集団の好奇の目から逃れるように、
私たちは近くのカフェに入った。

レジに並ぼうとした私に、真澄が小声でささやく。

「みんなの分の飲み物、買ってくるから、先に行ってて」

「え? 今、あの二人の間に入れと?」

「冷静な人がいないとダメでしょ。私だとキレちゃうかも」

「それはそうだけど……」

真澄に押し切られ、しぶしぶ奥の席へ向かうと、
二人は丸テーブルに向かい合って座っていた。

と言っても、腕組みしてガンを飛ばす美園に対して、
フジミんは居心地悪そうにキョロキョロしている。
仕方なく、その間に私が座る形になる。

「受験勉強で忙しいって言ってたよね? 
さっき一緒に歩いてた子、誰?」

「ああ、あの子? 同じ学校の子」

「そんなの、制服を見ればわかるよ!」

美園がバシッとテーブルを叩く。
あまりの迫力に、私まで椅子から3センチくらい飛び上がった。
こ、怖いよ、美園ちゃん。