直規が何を言いたいか、何となくわかる気がした。
空を見上げると、青い空がずいぶん高い。
たぶん、秋の空。
「そうかもしれないけど……。
誰かが死にそうな時、
誰も助けなければ、そこで終わりだよね。
けど、助けようとする人がいれば、
死で終わったはずの世界が枝分かれするかもしれない。
そう考えると、人の命を助けることには
大きな意味があるんじゃない?」
そうじゃなかったら、
一生懸命生きる意味なんて、この世界からなくなってしまう。
「直規?」
返事がないのが気になって直規の方を見ると、
私をじっと見つめていた。
「あ、いや、うん」
直規は、曖昧に頷いて下を向いた。
そして次に顔を上げた時には笑顔になっていた。
「なんだよ、さおりのくせに」
そう言って、私の髪をくしゃくしゃ搔き回す。
その手から逃れようと笑いながら転がって、
振り向いた次の瞬間。
私は直規の大きな手が届かない世界へ、引き戻されていた。