萌黄色の若葉の隙間から、青空が見えた。
木漏れ日が直規のグレーのパーカーに柔らかな影を落とす。

風の音に混じって寝息が聞こえてきた。
隣を見ると、直規は気持ち良さそうに口を開けて眠っていた。
目を閉じると、直規の寝息と
私の呼吸のリズムが自然と近づいていく。
いつの間にか、私も眠っていた。

どのくらい眠っていたんだろう。

ほっぺたに触れる指先がくすぐったくて目を覚ました。

「おう、やっと起きたか」

目を開けると、直規の顔が目の前にあった。

「ちょっと、顔近い!」

思わず両手でブロックすると、直規は悪びれずに笑った。

「弟にもキモいって言われる」

弟か。そう言えば、私にもいるんだよね。

「弟って、どんな子?」

「道哉って名前なんだけど、
頼りなくってさ。まあ5歳離れてるし、
うちは親父が早く死んだから、俺が親父代わりだな」

「そうなんだ」

「まあ、でもかわいいよ」

道哉くんの話をする直規の目は優しい。

「私、どうやら弟がいるみたい」