ファミレスの扉を開けたところで、
直規の姿は見えなく……ならなかった。
ハッと振り向いた直規も、
私を見てホッとした顔になる。

桜木町駅からバスで連れて行かれたのは、
本牧の先にある大きな公園だ。
馬場には本物の馬がいた。
こんな場所があるなんて、知らなかった。

まだ人の少ない公園を直規と並んで歩く。

「あ、ライラック」

紫色の花を見つけて、私は思わず駆け寄った。
昔からの習慣で、ついハッピーライラックを探してしまう。

「何探してんの?」

「ハッピーライラック。ライラックって、
普通は花びらが4枚なんだけど、たまに5枚の花があるの」

「へえ。それを見つけたら、どうなるの?」

「さあ」

私が知っているのは、
それを見つけたら幸せになるってことだけ。

「なんだそれ」なんて呆れた顔をしたくせに、
結局直規の方が真剣にハッピーライラックを探している。

「もういいよ」と私が言うと、
なんだか残念そうな顔をしているのが笑えた。

外国の風景みたいなだだっ広い芝生にたどり着くと、
直規は芝生の木陰に寝転び、長い手足を投げ出した。

「ちょっと休憩」

その顔があまりにも気持ちよさそうだったから、
私も隣に寝転がった。
スカートと迷ったけど、デニムにして正解だった。