慌てる私に、直規は冷静だった。

「あと20分でバイトが終わるから、
下のコンビニで待ってな。
いいか、俺が行くまで、絶対に動くなよ」

「う、うん」

こんなふうに誰かに心配されることなんてないから、
ちょっとこそばゆい。
素直にコンビニで待っていると、
直規は約束通りに息を切らせて迎えに来てくれた。

向かったのは、駅裏のファミレスだ。
チャラ男とも来たところ。
そう言うと、向かいの席でコーヒーを飲む直規が、
「チャラ男って言うな」とムキになったので笑った。

それからたくさん話をした。
大学に入ってすぐ、
レストランのバイトで金髪さおりと出会ったこと。

オーダーは間違えるわ、水はこぼすわで、
失敗続きの金髪さおりを助けるうちに仲良くなって、
付き合い始めたこと。

「金髪さおりって、けっこう人気だったんだよ。
子供とかお年寄りには特に。
不思議と寂しい人がわかるらしくて、
声をかけて仲良くなっちゃうんだ。
だけどミスばっかりで、
結局レストランをクビになっちゃって」

金髪さおりのために、
直規が今の映画館のバイトを見つけたこと。
それなのに、夏休みの間に勝手に辞めていたことも聞いた。

「夏の間、俺は海に行きっぱなしだからさ。
放ったらかしにしてたのが悪かったのかな」

放ったらかしって、子供じゃないんだし。
私が呆れると、直規は
「こっちのさおりは大丈夫そうだけどな」と笑った。
何それ。