「は?」

「勧めはしないけど」

「何を?」

もしかして、医学部のこと? 
私がそう聞き返す前に、父の携帯が鳴る。

病院からなのだろう。
父は「ああ」と短く答えると、
今時珍しいガラケーをパチンと折りたたみ、
よいしょ、と立ち上がった。

そして、「俺の人生じゃないし」と一言つぶやくと、
食べ散らかしたまま出かけて行った。

俺の人生じゃないしって、当たり前じゃん。
そんなの知ってるし。
わざわざそんなこと、言わなくてもいいのに。

私はビニール袋に父が食べ残した
ポテトチップスと大福を
コンビニのビニール袋に乱暴に突っ込むと、
ぎゅっとその口を縛ってゴミ箱に投げ入れた。