すぐそばに、紺のブレザーの制服を着た
男の子が立っていた。

うちの制服は中学も高校も詰め襟だから、
他の学校の子だろう。
背は私よりちょっと高いけど、
体の線が細くて、顔も幼い。中学生かな。

「高等部の中央棟って、どっちですか?」

高等部は建物が入り組んでいて説明が難しい。
どう説明しようか迷っていると、
男の子は「あっ、怪しい者じゃありません!」
と両手を顔の前で振った。
いや、わかってるってば。

「学校見学に来たんですけど、
友だちとはぐれちゃって。
『あっちの方』とかだけでも教えてもらえれば」

しゃべりながら、ニキビの跡が残る顔が
真っ赤に染まっていくのがかわいい。

部活の後輩とか弟って、こんな感じなのかな。
帰宅部で一人っ子の私には、すごく新鮮。

だからだと思う。
塾の自習室で勉強しようと思っていたのに、
つい自分から助け船を出してしまったのは。