ページをめくっていくと、国家試験の合格証書を手に、
ガッツポーズをするお母さんの写真が現れた。
「夢と希望に満ち溢れた」という言葉がぴったりの、力強い笑顔。
自分が目指す場所に向かって一歩ずつ歩いている顔が眩しい。
お母さんの身内に医師はいない。
ということは、お母さんは自分の意思で医師を目指したってことだ。
頑張って医師になったのに。
それなのに、こんなに早く自分の人生が終わるなんて、
考えもしなかっただろうな。
そう思うと、胸が痛んだ。
その胸の痛みを感じた瞬間、唐突にわかってしまった。
佐藤直規が言っていた「俺には責任があるから」の「責任」の意味を。
そして、「責任って?」と私が聞き返した時、
佐藤直規が一瞬言葉に詰まったのは、私を気遣ったからだということも。
お母さんは、私をかばってくれたのかもしれない。
思いつきの推測はすぐに確信に変わる。
その重さに、私は動揺した。
佐藤直規に会いたい。
さっきとは違う理由で、私は佐藤直規に会いたいと心の底から思った。
私と同じ痛みを抱えて生きている唯一の人、
でも、どうすれば会えるのかわからない人に。