2階のキッチンに上がると、マグカップはちゃんと洗ってあった。

無意識に自分で洗っていたみたいだ。

それより、真紀子さんの手帳だ。

色も大きさもわからないものを探すなんて、随分と効率が悪いけど、仕方ない。

前回は、リビングのすべての引き出しを開けまくったのに、
結局なにも見つからなかったから、他の部屋を探すことにした。

奥の和室のダンス。バスルームの洗面台。色んな引き出し。
手帳らしいものはどこにもない。

父が昔、使っていた部屋で机の大きな引き出しを開けると、
本のようなものが入っていた。

それは私のマフラーと同じ、灰色がかった水色のアルバムだった。

そこには、私とあまり年が変わらない、父とお母さんが写っていた。

同じ大学のウインドサーフィン部の先輩と後輩として出会った頃のものだろう。
ウエットスーツを着た人たちの中でピースする二人の写真。
別の写真では、夜の海で花火を持ってはしゃぐお母さんと、
その横で突っ立ってる父。
今よりちょっと若いだけで、その顔にはやっぱり生気がない。
笑える。