錆びついた門を押すと、いつもと同じ、軋むような音が響いた。

手入れもしていないのに、花壇の土から新芽がポツポツと顔をのぞかせている。

この花壇も、真紀子さんが元気だった頃は花であふれた。

チューリップ、ゼラニウム、ニオイバンマツリ、ライラック。

華やかな花壇を満足そうに眺めながら、真紀子さんはよく言った。

「人はみんな、両手いっぱいに才能の種を持って生まれてくるのです」

もう何百回も口にしているくせに、毎回初めて話すかのような口ぶりで。

「ただし、放っておいても、花は咲きません。日に当てて水をやらなければね」

開業医の孫、医師の娘。

それが、私が持って生まれた種。だから、その花を咲かせなければ。

真紀子さんの言葉は、いつの間にか私にそう思わせていた。