最悪、最悪、最悪、最悪! 

頭の中でくり返す叫びに合わせて、ドス、ドス、ドスと地面を踏みしめていく。
坂の途中で振り向くと、青空を背負った大観覧車が遠くに見えた。

あの日、佐藤直規に出会ってから怒ってばっかりだな、私。

今度会ったら、一言言ってやらなきゃ。
いや、一言じゃ済まないかも。

そりゃあ、あっちの佐藤直規とフジミんは別人だけど、
枝分かれする前は同じ人間なんだし。

あーもう、出てこい! 佐藤直規! 

なんて、心の中で叫んでも意味はない。
早く帰れたんだから、勉強しよう。

そう思っていたのに。
また来てしまった、八月一日医院に。

前に真紀子さんの手帳を探しに来た時、
マグカップを洗い忘れて気になっていたのだ。
それに、相変わらず真紀子さんは手帳手帳とつぶやいているし、
今度こそ探してあげなくちゃ。

というのは言い訳で、まっすぐ家に帰って勉強する気になれなかっただけだ。