うそでしょ?
夜空に浮かぶ巨大なデジタル時計は、いつの間にか「6:00」の表示。
なにこれ? どういうこと?
ついさっきまで、確かにこの時計は5時だったのに。
知らない男、でも私の名前を知っている男。そして、6時。
お店に入ってから、20分も経たない間に起こった
意味不明なできごとが頭の中をぐるぐる回る。
その時、カバンの中でスマホがブルブル震えた。
しまった、待ち合わせ!
私は慌ててスマホを取り出して謝った。
「真澄、ごめん!」
「よかったー、つながった。今どこ?」
「遊園地の先の交差点」
「遊園地? なんでそんなところにいるの?」
「変な人に追いかけられて、逃げて来たの」
「なにそれ! 大丈夫?」
「たぶん……真澄たちは今どこ?」
「スタバだよ。待ち合わせの」
「え!?」
私が店を出た後に来たってこと?
それにしたって、40分も走っていたはずはないのに。
「もしもし、さおり、大丈夫?
美園と迎えに行くから、そこから動いちゃだめだよ」
「う……ん。ありがとう」
よく「狐につままれた」と言うけど、今の私の気分はまさにそれ。
じゃあ、あの男は狐? いやいや、そんなことあるわけないって。