図書館の前は、公園に向かう人と車でひどい渋滞だ。
車列の向こうの公園は、桜の華やぎで満ち溢れている。

「あれ以来、桜は苦手なんだよね」

こんなこと、真澄や美園にも言ったことないのに。

つい言ってしまったのは、あの記事を佐藤直規に読まれたせいかもしれない。

「同じだ。俺と」

「え?」

「俺も苦手なんだ、桜」

「珍しいね。初めて会ったよ、私と同じ人」

「俺と、俺の親父なんだ」

「何が?」

佐藤直規を見上げると、緑がかった茶色い目が私を見つめ返した。

「俺の世界で、あの事故に遭ったのは」

「え?」

その時、あの日みたいな強い風が吹いた。
眼の前で舞い上がる薄紅色の花びらを、私たちは呆然と見上げた。