「そんなマンガみたいなこと、あるかよ」
そう言いながらも、佐藤直規は険しい顔で新聞を乱暴にめくった。
「違う」
「何が?」
「首相の名前。去年から上川首相だよな」
「その名前は聞いたことがあるけど、
こっちの今の首相の名前は福原武雄だよ」
「マジかよ」
佐藤直規は眉間のシワを指で揉んだ。
そして、突然何か思いついたように歩き出した。
「どこ行くの?」
「昔の新聞が見たいんだ。ええと……」
佐藤直規は圧縮版がずらりと並んだ棚から
一冊を取り出し、せわしなくめくる。
「あった。これだ」
切羽詰まった顔が気になって、
目当ての記事を目で追う佐藤直規を横から見上げた。
「え?」
ページをめくる大きな手が止まる。
「この『八月一日さおりちゃん(5歳)』って、お前……だよな?」