「プロフィールがちょっとずつ違う。
それこそが、一人の同じ人間の中に別の人格が入ってるって証拠なんじゃないか?」

冗談じゃない。私は思いきり首を振った。

「そんなことあるわけないでしょ!」

「だって、実際に名前も生年月日も
同じさおりが存在してるんだぞ?」

「他人の空似でしょ」

「似すぎだろ。おまけに、
八月一日さおりなんてそうそうない名前じゃん」

「じゃあ聞くけど、別の人間が自分の中にいるとして、
別の人格が出ている間、私はどうなってるわけ?」

「眠ってるんだろ、きっと」

そんな適当な話、自信満々に言われても困る。
私はわざとらしくため息をついて、首を振った。

「ありえない。
だって私、今まで一度も記憶がなかったことなんてないもん。
そんなの、周りが気づくでしょ」

「それはさあ」

佐藤直規が私の言葉を遮って、得意げにツンと顎を上げた。

「黒髪のさおりがサブ人格で、
メインの人格が金髪のさおりだからじゃないか?」

私がサブ人格? 
そんなこと、あるわけないじゃない。