「そこまで歳が離れていると、
弟っていうより息子って感じじゃない? 
そのせいかな。八月一日先生って、子供とお年寄りにやたら好かれるよな」

健太郎のおかげかもしれないけど、それだけではない気もする。

思ったことを口にする代わりに、私のトレードマークになって久しいショートカットの茶髪をかき上げた。

十年前、海で溺れたあの時─。
あの時以来、私は金髪のさおりと一緒に生きてきた気がする。

私の中にいる「金髪のさおり」が、以前の私なら言えなかったことを言ってくれている。

そんな気がすることが、年々増えている。

束の間の休息を断ち切るように呼び出し音が鳴った。

慌ただしい一日が、今日も始まる。