「やりたいことってなに?」
「まだ内緒だよ。
でも、親父が許してくれたら、地方の大学に行こうと思う。
俺は自分に甘いからさ、知ってる人がいないところで一から始めるよ」

「えっ」

「そんな顔しないでよ。まだ受かるかわかんないんだし」

そうだけど……。
直規だけじゃなく、フジミんまで、遠くに行っちゃうなんて。

「それより、さおりんはどうするの?」

フジミんが、私の目を覗き込んだ。
直規と同じ、緑がかった茶色の目で。

「私も、決めた。医師になる」

真紀子さんにレールを敷かれたからじゃない。

二度も命を助けられた私は今、こうして生きている。

私の人生は終わることなく、続いている。
あるいは、枝分かれしたのかもしれない。

だからこそ。
だれかの人生が終わりそうな時、枝分かれする手伝いがしたい。

向こうの直規と同じように。
そう心の底から思った。