「夢、見てた」

天井を見ながら、フジミんがつぶやく。

「どんな夢?」

ふふ、と思い出し笑いをする顔は、なんだか楽しそうだ。

「さおりんを迎えに逗子海岸に行ったら、もう一人の俺がいるの。
でも、ピアスもしてないし、なんだかちょっと真面目そうでさ。
前にさおりんが話してた、パラレルワールドのもう一人の俺って、あんな感じなのかも」

直規だ。
そう思っただけで、心臓のあたりが熱くなる。

「もう一人の俺が、こっちに気づいて近づいてきたんだ。
『あれ、こういうの、ドッペルゲンガーって言うんだっけ。
俺、死ぬのかな、やべえのかな』って思った」

フジミんがちらりと私を見た。

「でも、別に怖くないし、イヤな感じもしないんだよね。
そのうち、もう一人の俺がどんどん近づいてきて、ぶつかる! って思った瞬間、いなくなったの。いや、いなくなったって言うより、俺の中に入ってきたんだな」