寝ているのは、直規? それともフジミん? 

掛け布団に隠されていて、顔がよく見えない。

震える手でそっと布団を持ち上げる。
横向きに寝ていたその人がこちらを振り返り、目を開けた。

緑がかった、茶色い目。
違う世界からゆっくり戻ってくるように、その目はゆっくりと焦点を結び、そして私を捉えた。

どうして? 全然、わからない。

いつもなら、目が合ったら一瞬で、これが直規なのかフジミんなのか、すぐにわかるのに。

大きな手のひらに頬を優しく撫でられても、その人が直規なのかフジミんなのか、私にはわからなかった。

それなのに。

大きな手の平から温かくて優しい何かが激流のように流れ込んで来て私の中を一周し、それは涙になって流れていった。

「どうして泣くの」

その人が顔を起こした拍子に、額の傷が見えた。

「大丈夫だよ、ちょっと熱が出ただけだから。それに俺、不死身のフジミんだよ?」

そうだね、と返すのが精一杯の私の頭を、大きな手が優しく撫でた。