最後の時をこんな風に過ごしたかったわけじゃない。
このまま直規と離れてしまったら、絶対に後悔する。

私は、海をじっと見つめる直規の左手に自分の右手を滑り込ませた。

驚いた直規が私を見下ろす。
私から手をつないだのは、初めてかもしれない。
大きな手が私の手をぎゅっと握り返す。

「組み合わせって、やっぱりあると思う」

「なにそれ」

「俺は、さおりとならどんどん変わっていける。
でも、金髪は俺といても変われないんじゃないかな」

それもそうかもしれない。
直規があんなに世話を焼いても、金髪は変わらなかったのだから。

「他にないかな。金髪を救う方法」

「お母さんは? 金髪のお母さんは、生きてるんでしょう? だったら……」

話の途中で「それは無理」と直規がきっぱり言い切った。

「あいつは母親のこと憎んでたもん。
だから、逆効果だと思う。他に誰かいないかな。
金髪を本気で叱ってくれる人」

私を本気で心配してくれる人なんて、すぐに思いつかない。

だいたい、「このままだと海で行方不明になる」なんて話、
信じてくれるような人なんて……